相応が憑依呪術の展開のうえで重要と思われるのは、彼が阿比舎の法にたけていたとされるからです。
阿比舎の法とは、佐和隆研編の『密教辞典』によれば、「童男或いは童女に天神等を請降してその支体に遍入させて、未釆の善悪・吉凶・災祥・成敗等を語らせ、或いは病者を悩ます悪霊を童男女に遍入させて呪縛し、悪霊を正見に目醒めさせ、病気を除く法」とある。
まさに憑依呪術そのものなのだが、童男女を使うというところに注意されたい。
小松和彦氏はこのことをもって、依りましを使った悪霊払い(駆り移し)の創始者を相応に求めている(『愚霊信仰論』)。
駆り移しを相応一人の創始に帰してしまうことには問題なしとはいえないが、小松氏も「巫蜆の徒によって行なわれていた神降しによる託宣つまりシャーマニズムを密教が巧みに取り込んだことを意味している」と指摘しているように、日本古来の憑依呪術と密教の体系的な教理の本格的な結合は、相応に始まるということはできるかもしれない。
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